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  そして誕生・・・
陽香の身長 : 45 cm  陽香の体重 : 2238 g
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  そして誕生・・・
  2004/05/28 (Fri)
午前1時30分。相方、私、相方の両親で産婦人科に到着。陣痛は5分間隔になりつつあった。

看護婦さんの誘導で、まずは相方だけがLDRに入る。基本的な診察を行うのだろう。残された我々3人は、とりあえず近くの椅子に座って待つことにした。

それにしても深夜の産婦人科は静かだ。母子同室のため、たまに病室から小さな赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。数時間後には私も父親になっているのか・・・。

15分ほどすると看護婦さんが戻ってきて、我々もLDRへ入るよう言われるが、相方の両親はここで帰るという。

お義母さん 「産まれたら教えてね〜。」
お義父さん 「あとは頼んだよ。」

よっしゃ、任せなさい!・・・と言いたいところだが、これからどんなことが待っているのか全くわからない・・・。とにかく私は全力で相方をサポートするのみだ。
その相方はというと、ベッドに寝かされNST(ノンストレステスト)を受けていた。看護婦さんは相方の現状と、このまま入院することになりますとの説明を私にすると、ナースステーションに行ってしまった。LDRには私と相方の2人だけが残される・・・。

LDR(BSS)
私  「さてと・・・。どう、具合は?」
相方 「まだ平気だよ。陣痛の間隔はだんだん短くなってるけどね。」
私  「大変なところ申し訳ないんだけど、こりゃすごい部屋だね。照明の色がゆっくり変わってるよ・・・。それにこの深海にいるような音響。液晶モニターも思ったより大きいし・・・。へぇ〜、本当にイルカが泳いでるよ・・・。」
相方 「・・・なんか、楽しそうだねぇ。」

しばらくすると看護婦さんが戻ってきて、NSTの結果を確認する。

看護婦さん 「陣痛は6分間隔くらいかな〜。赤ちゃんはとっても元気ですよ。じゃぁ病室に移動しましょうか。」

あれっ?このまま産むんじゃないの?・・・と思いつつ、荷物を持って同じフロアにある個室へと移動する。LDRからは数メートルの距離だ。病室に入ると相方は看護婦さんから渡された出産用の服と下着に着替えた。

看護婦さん 「定期的に来るけど、何かあったらナースコールしてくださいね〜。」

胎児の心拍と、ナースコールの動作を確認したあと、そう言い残して看護婦さんは病室を出てしまった・・・。なんだかみんな落ち着きすぎていて調子が狂うなぁ・・・出産直前ってこんなもんなのか・・・。

しかし相方の陣痛だけはちゃんとやってくる。徐々に痛みが本格化してきているようで、たまに苦しそうな顔を見せている。私は陣痛時刻の記録を再開する。

 2:21
 2:29
 2:33
 2:38
 2:44
 2:48
 2:53
 2:56

確実に間隔が短くなっている。5分を切る時もある。そのたびに私も相方の腰を押したり、叩いたりしてみるが、ゆっくりさするのがもっとも楽になるという。

相方 「あ〜来た来た来た・・・イタタタタ・・・。」

その声に反応して相方の腰をさする。本人はぎゅっと目をつぶって耐えている。かなり痛そうだ。

相方 「もう少しゆっくりさすって〜!」

す、すみません・・・。無意識に手の動きが早くなってしまうのだ。

相方 「・・・ふぅ、ありがとう・・・治まったよ。」
私  「はい、じゃぁ3分休憩ね〜。」
相方 「・・・楽しんでるでしょ?」
私  「ほら、また2分後に来るぞ。」
相方 「ぶぅ〜。」
私  「しかしこんなんで個室にひとりだったら、きっと淋しいだろうなぁ。」
相方 「そうだよねぇ。」

陣痛が治まると、今までの苦しみはどこに行ったのかと思うほど普通に会話ができる。まぁこうやって2人っきりで陣痛と闘うのも悪くない。個室でなかったらこうはいかないだろう。
午前3時をまわってからも依然として陣痛は続く・・・。相方も相当つらそうで、陣痛のあとも息が上がるほどになってきていた。

 3:02
 3:06
 3:10
 3:15

4分間隔になっている。そのうち1分は陣痛で苦しいので、相方の休憩は3分間ということになる。

 3:19

相方 「来たっ・・・ハァハァ・・・ん〜っ・・・ハァハァハァ・・・」
私  「どの辺をさすると一番いい?」
相方 「ハァハァハァ・・・うぐっ・・・ハァハァ・・・」

私の呼びかけに応じる余裕がなくなっている。息をするのがやっとという感じだ。

 3:23

相方 「また来たっ・・・ハァハァハァハァハァ・・・」

1分足らずの陣痛時間がものすごく長く感じる。私には腰をさすってやることくらいしかできない。そうやってひたすら陣痛が治まってくれるのを待つ。

相方 「ふぅ・・・ありがとう。今のは本当に出るかと思ったよ・・・。」
私  「おいおい、もうLDRに行こう。」

その時、部屋の外からナースコールの音が聞こえてきた。どうやら他の部屋の人が押したようだ。

私  「ほら、うちもナースコール押すよ。」
相方 「わかった、次も4分以内に来たらナースコールお願い。」

まったく・・・最後まで頑固な人だねぇ。

 3:26

相方 「う〜っ、来た来た来た来たっ・・・ハァハァハァハァハァ・・・」

もう充分だろう。相方の腰をさすりながらナースコールを押す。すぐに看護婦さんが来てくれる。

看護婦さん 「うん、そろそろ産まれるね〜。じゃぁ移動しましょうか。ゆっくりでいいですよ〜。」
相方    「ちょっと待って・・・また陣痛がっ・・・ハァハァハァ・・・」
看護婦さん 「はい、ゆっくり息をして〜・・・。それからさっきのLDRには他の人がいるから、もうひとつの部屋に行きますね〜。」

へ?・・・それってもしかして、さっき聞こえたナースコールの人・・・?
だとしたらタッチの差で入れなかったってことになるな。・・・まぁ、今はそれどころじゃない。相方は壁づたいに痛みをこらえながら歩いている。そこには1時間前のような余裕の表情はない。とにかく彼女を分娩台に上げるのが先決だ。

分娩室
看護婦さんに連れられて、先程のLDRとは違う、帝王切開も可能な分娩室へ移動する。BSS(バースサポートシステム)は導入されていないので、当然イルカも泳いでいない

相方が陣痛の合間に分娩台に乗る。その時、奥の部屋から看護婦さんとは明らかに雰囲気の違う女性が現れた・・・。助産婦さんだ。
まずは相方の足を開かせて現状を調べる。

助産婦さん 「あれま、こりゃもうすぐ産まれるね。」

やっぱり・・・。我慢しすぎだと思ったよ・・・。
分娩室にいるのは4人。相方と助産婦さんと看護婦さん、そして私。助産婦さんは相方の様子を見ながら、淡々とまわりの準備を進めていく。看護婦さんも手際よく相方の汗を拭いたりしている。そのてきぱきとした連係プレーはあまりに素晴らしく、私が入るスキなど全くない。部屋全体が静かな気迫で満ちている。

相方    「また来ますっ・・・陣痛がっ・・・ふぐっ・・・」
助産婦さん 「はい、ゆっくり落ち着いて息を吸って〜、吐いて〜、また吸って〜、吐いて〜・・・」
相方    「すぅ〜・・・はぁ〜・・・すぅ〜・・・はぁ〜・・・」
助産婦さん 「もう一度吸って〜、はい息止める。そのままいきんでみましょ〜。」
相方    「んぐっ・・・・・・」
助産婦さん 「そうそう、上手ですよ〜。」
相方    「・・・ハァハァハァハァ・・・」

分娩台に乗ってから何度目かの陣痛で、初めていきんでみようとの指示が出た。相方は吐きたい息を必死にこらえ、顔を真っ赤にして力いっぱいにいきむ。
相方の横に立っている私も、自然に相方と呼吸が同期してしまう。体全体に力が入って、気がつくと右足の親指をつっていた・・・。もう、何やってるんだか・・・。

助産婦さん 「はい吸って〜、息止めて〜。いきんで〜。」
相方    「ぐっ・・・・・・」
助産婦さん 「うまいうまい、もう頭が見えてますよ〜。」

すでに陣痛は3分おきになっていた。1回の陣痛中に2〜3回いきむ。

10回くらいいきんだ時だろうか・・・。助産婦さんの手の隙間から、さかんに動いている何かが見えた。
赤黒くて、濡れて光っていて・・・・・・あっ・・・

陽香誕生(生後30秒)
私  「あっ、産まれた。産まれたよ!
相方 「ハァハァハァハァ・・・うん、産まれた・・・。」

んあ、へぎゃ、んぎゃぁ、へぎゅ、んぎゃぁ〜!

部屋中に元気な泣き声が響きわたる。

助産婦さん 「はい、産まれました〜。女の子ですよ〜。」
看護婦さん 「3時55分です。」
助産婦さん 「早かったね〜、ここに来て30分も経ってないよ。」

産まれた・・・。すごい・・・とにかくすごいぞ。小さな小さな人間が全身で、これでもかっていうくらいに泣きじゃくっている。

かわいい・・・素直にそう思えた。

しわくちゃで、赤黒くて、血まみれだっていうのに・・・なんなんだ・・・そのつぶらな瞳は・・・その小さな手は・・・そしてその体全体からみなぎる力は・・・もうなんなんだ・・・かわいすぎるぞ・・・。

産まれたばかりの赤ん坊は、すぐに相方のおなかの上に乗せられた。助産婦さんが赤ん坊の口からカテーテルを入れて、体内の羊水を吸い出し、手慣れた手つきでへその緒を切る。その間に看護婦さんが赤ん坊の体を拭いていく。
それが終わると、相方と向き合うようにして赤ん坊をおなかの上に座らせる。母親になったばかりの相方と初のご対面だ。ついさっきまで苦しんでいた相方の顔が、もう満面の笑顔に変わっている。

相方 「うわぁ〜、かわいい〜。」
私  「ちっちゃいねぇ。元気だねぇ。よく泣くねぇ〜。」

そして赤ん坊は看護婦さんに抱かれ、相方から離れて体重計に乗せられる。

看護婦さん 「・・・2238gです。」

ん?2238g?・・・小さいぞ。思っていた以上に小さい。2500gはあると思っていたが・・・。

看護婦さん 「ちょっと小さめだけど心配ないですよ。」

そう言って、再び相方の胸の上に赤ん坊を戻してくれた。排出された胎盤とへその緒を助産婦さんがトレイに入れて見せてくれる。

助産婦さん 「へその緒が長いねぇ。これがしっかりと首に巻き付いてたから、最後はちょっと赤ちゃんも苦しかったかもしれないね。」

助産婦さんによると、へその緒は首に1周半ほど巻かれていたそうだ。しかも結構きつく巻いていたらしい。さぞかし苦しかったことだろう。
それが今では相方の胸に抱かれて元気に泣いている。

私  「ずっと泣いてるね・・・。」
相方 「かわいいね。」
私  「名前は陽香(はるか)かな?」
相方 「うん、陽香だね。」

そう・・・もうミニミニあっくんではない。陽香なのだ。

相方が抱いている間に、看護婦さんが陽香の脈拍と血中酸素量を計測する。

看護婦さん 「ちょっと酸素量が少ないので、酸素をあげましょうね。」

脈拍は150〜170で問題ないが、血中酸素量が80%くらいだったので、しばらく酸素を与えられることになった。
相方から離れて保温器に寝かされた陽香の顔の前に、半球型のおわんのようなものが置かれた。管がつながっていて、ここから酸素が出ているようだ。3分ほどすると陽香の血中酸素量が100%になる。同時にずっと泣いていた陽香が、おとなしく泣きやんだ。そっか・・・君は酸素が足りなかったんだね・・・。

落ち着いたところで陽香の手に私の人差し指を近づけてみる・・・。すごい・・・。こんなに小さくても5本の指で力強く握ってくるのだ。この保温器は分娩台で寝ている相方の後方にあるので、相方は陽香の様子を見ることができない。今は私と陽香の2人だけの時間だ。

陽香(保温器) 陽香(保温器) 陽香(保温器)

看護婦さんが陽香の身長を測りに来たので、泣く泣く場所を譲る。看護婦さんは何をするにも、陽香に向かって絶えず話しかけながら進めていくのがすごい。

看護婦さん 「は〜い、ちょっと身長を測らせてくださいね〜。そうそういい子ですよ〜。・・・えーっと、46cmだね。」

そういえば陽香が産まれて5分ほど経ってから、いつも診察をしてくれている院長先生が来てくれた。

先生 「あれ、もう産まれちゃった?」

え?・・・もしかして出産に立ち会うつもりだったんですか?・・・先生の予想を超えるとは、相方の出産時間は相当短かったのだろう。

私  「・・・なんだか鼻ぺちゃですね。」
先生 「あはは、赤ちゃんはお母さんのおっぱいを飲むのに鼻が高いと邪魔でしょ?だからみんな鼻ぺちゃなんだよ。」
私  「なるほど。」
先生 「赤ちゃんが小さめなので、少しの間、保育器に入ることになると思うけど大丈夫だからね。」
相方 「はい、お願いします。」
先生 「体温調節が上手くできるようになったら保育器から出して、体重が2300gを超えたら退院できますよ。」

体温調節か・・・脈拍に酸素量に体温に・・・体重の他にもいろいろとクリアしなければならない基準があるようだ。

看護婦さん 「保育器に入る前に、赤ちゃんにお母さんのおっぱいを吸ってもらいましょう。」

母乳まだは出ないのに、陽香の口を相方の乳首に近づけるとしきりに吸い付くようにする。本能とはいえ、そのひとつひとつの動作に驚かされる。
看護婦さんに記念撮影をしてもらってから、陽香は別の部屋にある保育器へと移った。相方は1時間ほど分娩台の上で休むことになる。

私  「お疲れさん。よく頑張りました。」
相方 「ふぅ・・・あっという間だったねぇ。」
私  「もう陣痛は来てないの?」
相方 「さっきみたいな激しいのはないけど、まだ定期的におなかが張ってる感じはするよ。」
私  「そっか・・・まぁ、ゆっくり休んでくださいな。」

相方と一緒に数々の苦難を乗り越えて、陽香は我々のもとへやってきてくれた。最後も首にへその緒をしっかり巻いての誕生だった。それでも母子ともに健康だったのは喜ばしいかぎりだ。
2238g、46cm・・・立派じゃないか。焦ることはない。一歩一歩ゆっくり育っていけばいい。

個人的には出産に立ち会うことができて本当に良かったと思っている。陽香の最初の泣き声を聞いたとき、私は心からしあわせだった
出産中、私が相方にしてあげたことといえば、陣痛の合間に一度だけ水を渡したことくらいだ。あとは足の指をつりながら、ただ見守ることしかできなかった。・・・こんな私でも、少しは相方の心の支えになってあげられたのだろうか。

・・・そろそろ病室に戻る時間だ。相方と一緒に分娩室を出る。窓から射し込む太陽の光が眩しい。いつの間にか夜が明けていた。
今日もいい天気になりそうだ。陽香の名にふさわしい日と言えるだろう。

病室に戻る前に2人で陽香に会いに行く。保育器の中で、体を丸めて気持ち良さそうに眠っている陽香・・・。

陽香(保育器)
私  「・・・よく眠ってるね。」
相方 「ほんと・・・。かわいいね。」
私  「・・・よかったね。」
相方 「うん、よかったね。」

初めまして陽香。私が君のお父さんです

産まれてきてくれてありがとう。

本当にありがとう

陽香 陽香 陽香


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